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透木釜・吊釜の場合の灰の仕方 (釜と灰との関係は?)

たまに聞く話:

「春には炉中の灰も多くなってくるので、五徳をはずし、透木釜を用い…」云々

…これは俗説だろうな

だって、
茶の湯では、なにより火相・湯相に心するもので
であれば灰の量は、茶事の度に、使う釜に合わせて、毎回微調整するものだろう
そうして、毎度、しっかり尉を取り除いて、火袋を整えて、ちゃんと灰を育てていれば、そう極端に炉中の灰は増えないはず

その「多くなってくる」とかいう灰をずっとほったらかして釜だけ替えてるんだとしたら、随分怠けた話だし、
第一、それでは湯がピタリと沸かないよ

上記のようなご説は、いわゆるお稽古茶道の先生の思いつきのような、本番の茶事をしない人の理屈じゃないかなあ


さて

灰の量は、
釜底中心から火袋の底までの高さで決めるべきものだろう

即ち、
灰の量は火袋の深さが肝心で、
(炭が寸法通りの大きさであれば)
常に、
・炉なら三寸強、
・風炉なら三寸弱(二寸五分強)
になるように調整すべき

そこをピシっと決めて、
その火袋の深さを元にして、適当な火袋をつくれば、そのために必要な灰の量は自ずと決まってくる
で、足りなければ足し、多ければ取り除く
それだけのこと

改めて整理すると、

「春には炉中の灰も多くなってくるので、五徳をはずし、透木釜を用い…」
と灰の量によって使う釜を替えるのではなくて、

釜(と五徳)が先にきまって、
釜に合わせて、五徳の高さと火袋の深さを最適化するように灰の量を調整する
というのが正しい言い方だ

実際には、
・火の気を見せないために透木釜を使うなら、底が浅いので灰を増やす
・火力そのものを減らすために湯の沸きやすい小さな吊釜を使うなら、縦長で底が深くなるので灰を減らす
という作業になる

もちろん、
釜(と五徳)一つひとつ形が違うのだから、灰の量も、釜ごとに調整するのであって、
それはなにも3月4月だけの話ではないはず


茶の湯の世界には、語り継がれるうちに、本質を離れてしまったような妙な言いよう・説明・言いぶり・伝説も多いような気がするな


まあまあ

要するに

よーくみて、道理をわきまえて

松風を楽しみ

美味しいお茶を飲みたい

というお話でした

by so-kuu | 2012-04-16 22:13 | 湯相・火相(炭・灰)
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