(画像:炉辺。WWWより。) 新暦2010年の11月9日は。 旧暦の十月四日で。 月日に十二支を当てはめていくと、亥の月の最初の亥の日に当たるそうで。 で。 その“亥の月の最初の亥の日”に、茶家では、風炉を閉じ、炉を開くんだとか。 いわゆる「炉開き」または「開炉」ってやつ。 --- ところで。 どうして亥の月亥の日に炉を開くのか? って? それは、ひとつには、陰陽五行説からの言い分のようだ。 なんでも、亥の月ってのは、陰の気の極まる「極陰」の月なんだそうで。 陰の気が極まると同時に陽の気を孕む、とか。 そして、亥の日ってのは五行では「水」の日に当たるそうで。 炉を開き、火を使う炉開きを水の日に行うことで、“火伏せ”の意を込めている、とか。 --- へえ。左様ですか。 そうした古くからの習わしを知っていて、尊重するのは悪くないかも。 現に、僕は、新暦より旧暦が好きだし、二十四節気七十二候を意識しながら暮らしている。 --- 但し、ドグマ・教条主義に囚われないように、気をつけたいもの。 「柚子の実の色付くころに炉を開く」 とは、(言い伝えに間違いがなければ)利休居士の言葉とか。 その柚子の実は、暦や陰陽五行説など知らない。 ただ、その年、その季節、その「今」を生きるのみ。 自然そのものを見つめ、感じ取って、その中で生きる。 僕も、そっちで、いきたいものだ。 --- 温暖化とも言われるこの頃では、茶書が書かれた桃山・江戸の頃より、晩秋も立冬も、きっとだいぶ暖かいだろう。 柚子の実も、かつてより色付くのが遅いんだろうか? 別の例を挙げると、 炉開き・口切の茶席に欠かせない、ということになっている椿。 この頃では、その炉開きの時期には、まだ咲いていないことが多いじゃあないか。 遠い北国から取り寄せたり、早咲きの品種を見つけてきたりしてまで、炉開き茶席には椿を、というのは、さて、自然だろうか? また、 炉開きは11月始め、と決め付けて、それに椿を間に合わせる、って、逆じゃないか? 椿が咲くのを待って、あるいは椿が咲き始めるくらいに寒くなって、炉を開くのが本来の姿だろう --- 暦や陰陽五行や習わしよりも、自然そのもの、いま・ここ、にこそ、ぼくらは寄り添っていきたいと思う。 それが自然だと思う。 茶の湯の世界の因習にただただ従ってお茶をするのは、なんかイヤだな。 目の前の景色・空気の冷たさよりも、習いを優先するとしたら、それはどうも解せないのだ。 自然にそって、自然の中で、自然の茶をしたいと思う。 僕の茶は、そういう風に行きたいなあ。 --- 個人的には、風炉の名残をもっともっと引っ張って、冷え枯れていく今を見つめるのも乙なもんだ、 と最近では感じている。 風炉の火もなんだかうすら寒いなあ、とか 野辺にももう草花がないなあ、とか 一年越しの古茶の風味、とか そういうものを、しみじみと味わってみるのも、面白いもんだと思う。 それがまた炉開き・口切りの嬉しさをグッと盛り上げもするし。 --- そして、僕の家の炉開きは、 柚子の実の色、椿の開花、日の光、枯葉や風の様子、朝晩の冷え込みなんかと相談しつつ、 “ああ、いよいよ風炉は終いにして、炉に火を入れたいなあ” と本当にしみじみと感じたら、としよう。 --- 話をはじめに戻して。 炉開きはいつ? と問えば。 まあ。 それは、お茶人さんそれぞれが決めればいいんだろうな。 それぞれの、お好きな時に、でいいんだと思う。 茶の湯、って、数奇の道、なんだから。 --- とはいえ。 巷(いわゆる今の茶の湯業界)では、ちょうど今頃が、炉開き、そして「口切」の季節。 「茶人の正月」を迎えている。 ”カレンダーの11月から4月が炉の季節です”と言って憚らないお茶の先生も大勢いるだろうし。 お勉強好きなお茶の先生のところでは、厳密に今日の亥の月亥の日をもって開炉の儀を執り行っているかもしれない。 僕の通う稽古場でも、先日炉を開いて、お祝いをした。 今いる場所でしっかり勉強させて頂いて。 かつ、わたしの茶を求めていこうと思う。 そんな今年の亥の月亥の日のメモ。 続編: 「炉開きはいつ? その2 2012年のマイ炉開きの時季をさぐる」 はこちら、別ページへ
by so-kuu
| 2010-11-09 19:04
| 自然ということ
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