炉の季節 もう少し炉灰があれば と感じた 特に 底の浅い透木釜を使う際などには 炉中にかなり沢山の灰が必要だし 撒き灰も 灰器にたっぷり盛って出したいし たっぷり撒きたいし また 風炉灰への補充に 少しずつ取られていくものだし やっぱり 炉灰は たっぷり用意して 十分に持っておきたいもの ということで 追加分として 改めて 生灰から 茶の湯灰を作ることに 作業して感じたことなど含め またメモっておく ●茶の湯灰とは? ・茶の湯に用いる灰 ・クヌギ(くぬぎ炭)の灰をよしとする (茶の湯灰としての機能と美しさをもつよい灰に育つのはクヌギが第一とされる) ・炭以外のゴミ・不純物や灰のうちでも育つ見込みのない成分を取り除いたもの ・適度な粒の大きさ(炉灰・風炉灰それぞれに) ・熱・空気・水分により変質し、茶の湯灰として育ってゆく灰 ●よい茶の湯灰とは? ・断熱性が高い ・適切な粒度 ・炉中での扱いやすさ(灰匙から滑りやすい等) ・風炉灰形の作りやすさ(まとまり・重み) ・色合い(炉ではしっとり湿って暗褐色・よい風炉灰は得てして黄ばみがかっている) ・風合い(炉ではざんぐり・風炉ではキリリなめらか) ●茶の湯灰の作り方 ・椚の生灰を用意 ・バケツ半分まで灰を入れ、7・8分目まで水を注ぐ *アクは抜きすぎない ・よくよく攪拌する *大小微小の灰粒やゴミを水の中で完全に分離する *上に浮いてくるゴミ・炭粒などは掬いとって捨てる ・すぐに水漉し 1回目(細目篩) *篩にはゴミとザラっとした灰が残る→全て捨てる(茶の湯灰としては使い物にならない) ・すぐに水漉し 2回目(極細目篩) *篩にはドロッととした灰とゴミが残る→全て捨てる(一見灰に見えるがよく育たない灰なので捨てる) *水漉し分別によって、茶の湯灰作りの第一工程で「茶の湯灰のエリート」を選抜し、「よく育つ灰」だけを大切に育てる、というやり方 ・半日~1日放置して灰と水を分離させる ・上澄み水を捨てる 1 ・さらに半日~1日放置して灰と水を分離させ、余計な水気をしっかり切る ・上澄み水を捨てる 2 ・上澄み水を捨てきったら、灰をよく混ぜる(トロトロの極め細かい灰だけになっている) ・トロトロの灰を新聞紙5・6枚の上に並べる(ハンバーグ状に) ・灰の上にもう1枚新聞紙を重ねる(ホコリと直射日光を避ける) ・灰を適度に乾かす ・保存容器にしまう ・炉開き直前まで保管 *時折乾き具合をチェックする ・風炉灰を作るには、さらに細かくなるように、練る ●茶の湯灰作りにおける「水漉し分別法」 茶の湯灰の作り方にも色々流儀があるようだが 上記の方法では 灰を「水漉し分別」している そしてのその際の篩の目が(世間一般に流布している方法と比べて)ずいぶん細かい 懐石の味噌汁を漉すスイノウのように目が細かい(乾いた灰など通らない) そこが肝だと思う 2回の水漉し分別で選別された灰はトロトロで細やか 反対に篩に残った灰は 1度目はザラザラ 2回目はドロドロ 2回目で残った灰など、一見灰として使えるようにも思える 原料である生灰のうち3割程度を取り除き捨てることになり ちょっと もったいないようだが いやいやいやいや 全くもったいなくない なぜなら 篩に残る灰は、灰に見えるが、よい灰ではないからだ 茶の湯灰として使っていっても、よい茶の湯灰に育つ見込みのない灰なのだ 反対に 篩を通った極めて細かい粒子の灰だけがよい灰に育つ灰なのである *風炉灰としては、この極細かい灰を、練って、さらに細かな粒子の灰にしてから使うことになる この「水漉し分別法」による茶の湯灰作りとは 言ってみれば 茶の湯灰のエリート選抜試験 である 少数精鋭を さらに鍛えて 極上の茶の湯灰を手に入れよう という魂胆なのである ●比較として 別の(よく聞く)灰作り方法を紹介して比較する (*印は比較コメント) ・生灰を用意 ・荒目篩で篩う(乾いたまま) *ゴミ取りだけで灰の分別効果はない、荒目篩で取れるようなゴミは後の工程で水に浮くので不要の工程では? ・中目篩で篩う(同上) *ほぼ同上、乾いたまま灰を篩う工程は不要では? ・上記の篩に残った灰・固まった灰の粒は磨り潰して灰に混ぜる *育たない灰(=ゴミ)をわざわざ微粒子にしてからよい灰に混ぜる行為 ・灰をバケツに入れ、水をたっぷり注ぐ ・浮いてきたゴミを取る ・しばらく放置して灰と水とを分離させる *ここで「水漉し分別」しない、乾いた灰を篩うだけでは灰の分別効果はなく、 ・上澄みの水を捨てる ・再度バケツに水をたっぷり注ぐ→分離→上澄み捨て、を3回~5回繰り返す *往々にして1日で全工程をしており、灰と水を分離させる時間が短く、結果、残したい方のよい灰を水と一緒に捨てている ・残った灰をムシロの上に広げる *ムシロの目の中に灰がくっついて取れず、相当な量の灰いこーる大事なお宝を捨てている ・番茶をかける *茶の湯灰に番茶を掛ける必要があるか?否か?は諸説あり ・乾かす ・乾いてきたら、灰を手で揉み合わせる ・番茶掛けて→乾かして→揉む、を3回~5回繰り返す(土用の晴れの日に時間の許す限り行う) *コロイド状液体の灰が乾燥する過程で、灰同士が結びつこうとする性質が増す、との説有 *であるならば、湿って乾いて、液体から粉体へ、を繰り返す事においては一定の効果がある方法では? ・荒目篩で篩って、撒き灰の状態にしてから、容器に保管 ・炉の季節になったら、そのまま使う ここから風炉灰をつくるには ・炉灰を完全に乾かして ・乳鉢で磨る *育たない灰をわざわざ磨って微粒子にして、よい灰と一緒くたにする方法 ・風炉灰用の容器で保管 以上 総じて、 よい灰に育たない灰を取り除かず、そのまま使う方法、と言える 炉灰では違いに気づかないこともあるかもしれないが、 特に風炉灰では、その後の育ち具合・育ってゆくスピード・年期に違いが出るはず というのも これまで一般に 「よい風炉灰を手に入れるには数十年かかるものです」 と言われてきた これは育たない灰をそのまま使っているからかもしれないのだ (画像は水漉し分別1と2でふるいに残ったもの、捨てるゴミ灰) よい灰の中に、永遠に変化しない、決して良くならない灰が3割も混じっていたら、 全体としてよくなるのに数十年かかる、というのは、そりゃそうかも でも、それは決して仕方ない話ではない 育たない灰を除けばよいのだから 反対に よい灰100%ならば、育つのは早いはず であれば よい灰だけを選別して、スタートしよう 「水漉し分別法」によってエリート選抜組としてスタートした茶の湯灰は 5年ほど炉灰として使い、熱・空気・水に触れ、 それを材料にして、 さらに適度に細かな粒度まで練って作った風炉灰にすれば、 (使用と手入れの頻度にもよるけれど) 1年のうちに黄ばみ初め、 2・3年も使えば、従来式の10年・20年ものの灰のように良くよなってくる、と言う そう聞けば・・・ why not??? ●ポイント 灰 といっても その粒の全てが同じものではないんだ という認識が大事かな 灰とゴミ、だけではないんだな ゴミと、よく育つ灰と、その間に、灰だけど育たない灰、というのがある 茶人には、まず、その分別がある事が大事 それを知れば、 自分の茶の湯灰をどんな風に扱うか? 自ずと知れてくる、と感じる そして よい灰になる素質のある灰だけで初めて 丁寧に丹精を続ければ 自分の茶人人生の途中で 極上の茶の湯灰を手に入れられる キリリとしてなめらかな灰形を作れる と思えば それは 大きな希望じゃないか? 茶の湯灰は侘び茶人の大事な道具の一つだと思う
by so-kuu
| 2016-05-03 22:26
| 湯相・火相(炭・灰)
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