針屋宗春 或る雪の夜の茶の湯 (『茶湯古事談』)

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秀吉公或雪の夜、
利休か侍座せしに、
今よひ町に茶の湯すへきものハ誰そと御たつねあり、
上立売に針屋か仕り侯ハんと申上る、
左あらハ汝をつれて御成あらんとて、即剋御成ありし
其時の針屋は纔に四問間口の家にてありしとなん、
此事前に記せし大晦日の事にや、又前の夜の事にや、今知るへからす、
針屋か事にも異説あり、
左にしるしぬ、針屋宗真方へ朝茶の湯に細川三斎、利休を招請するとて露地の外まて水打そゝき、戸も明かけ、何れ客待けしきなりしに、
折節秀吉公 聚楽より伏見へ御成あらんとて御通り、
不斗御目にとまり、御駕をとめられ、御たつね有しに、
宗真と申者の宅にて、今朝ハ越中守、利休をまねき候由申上しかハ、
かねて御聞及ひ被成し茶人也、幸のホなるほとに、茶師に御あひ被成んとて待合へ御入有しかハ、
宗真急き御迎に罷出、数寄屋へ請し奉り、
まつ釜をあけて炭を多くいれ、釜を勝乎へ取入、湯をすて、あたらしき水を入、ぬれ釜なから持出てかけ、
扨三方に洗米・熨斗を添へて差上、会席なしに中立あそはされ、
其間湯わきいつると御案内申上、
御入ありて、小茶碗を持出て茶一掫ひ入て毒味せし、其小茶碗ハ勝手へ入、
扨定法のことく御茶たてゝ上ぬ、
殊の外御感あり、
則知行百石、永代の御朱印にて下しおかれ今に領しぬ、
扨御立ありし跡にて三斎・利休ヘハ料理出し、茶をたて出しぬ、
此針屋今に家相続せしとなん

(『茶湯古事談』)

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by so-kuu | 2014-02-04 21:00 | 茶人 | Comments(0)
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