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細川三斎の茶 その2 茶杓 (永青文庫)

永青文庫の「細川三斎の茶」展

書状・釜・茶杓・花入など
みもの、優品多数


で、茶杓について書き留める



(会記中展示替えあり)

まず、前期展は・・・


●細川幽斎
●細川三斎
●古田織部
●小堀遠州
●千宗旦
●千利休

の作が一度に見られる
それぞれの作行き・個性がよく判る、有難い展示

●茶杓 細川幽斎作 16c

小振り、細目
すんなり
古風と言えば古風


●茶杓 銘 くろつる写し 細川三斎作

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有名な一本
利休作「くろつる」を写したもの、とか
実に素直な作り
切止から中節を経て櫂先へと向かって、作意なく、素直にすーっと広がっていくような形は、利休、及び利休門の茶杓の一典型だろう
この作にもそれが表れているように思う
露も撓めも自然な丸み


●茶杓 銘 さかひ 古田織部作

細川三斎の茶 その2 茶杓 (永青文庫)_b0044754_13391020.jpg


これまた利休門的と言える一本だろうと思う

織部と言えば、利休の逆張り、
桃山時代的で、ダイナミックな、
“ひょうげもの”の印象が、昨今多く語られがち

けれど

こと茶杓をみると、
利休の形をほぼ踏襲しているものが多い

その上で
逆樋や、高い蟻腰や、ことさら深い薬研樋の竹など、竹材をより吟味して用いるところに、個性が漂っているように思う
(竹材吟味は、織部の弟子の遠州では、ずいぶんエスカレートした形となったものだ)
(千道安からの流れを汲み、織部を通っていない片桐石州は、やはり美竹追求路線に行っていない、というのも面白い)

この「さかひ」
オーソドックスでスラリとした作
撓めがやや直線的というか二重撓めに近いというか
また枉げの先が長めなのも特徴か
その辺の微妙なディテールが、茶杓全体に、大らかさ・雄大さ・男性的な印象を与えているように感じる


●茶杓 銘 安禅寺 小堀遠州作

細川三斎の茶 その2 茶杓 (永青文庫)_b0044754_1543115.jpg


ね、珍しい竹でしょう?って感じ
なんといっても、節辺りに穴が走っているのが見せたい所なのだろう
穴が終わっても切り止めまで樋が通っていて、断面はU字形だ
筒にはお得意の歌銘もバッチリぎっしり
こういう、これみよがしなの、苦手


●茶杓 銘 小木刀 千宗旦作

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千家三代・元伯宗旦の茶杓
やや小振りで直線的な削りが、いかにも小木刀
折撓め
直腰
この時代の作としては身がやや厚め
切止は二刀(に見える)
削りもスカスカとした勢いが感じられるようだ
好印象
実にスカッとして気持ちがいい
こういう茶杓、今度削ってみようかな


●茶杓 銘 ゆがみ 千利休作

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あえて一番最後に書く

利休作

例によってすらりとしている
そしてなんとも言えない艶めかしい感じがする
僕の観る利休茶杓の特徴かもしれない
丸撓め、丸櫂先
但し
節下が左に曲がっている
で「ゆがみ」

これを“作意”ととるか?
または“竹に素直につくった”(竹の繊維はねじれながら伸びている)ととるか?
受け取り方は分かれるところかも
作り手の意図は今や知れないし
まあ、どっちでもいいけれど

利休作だから、と尊ぶ人は多いのだろうけれど
僕個人としては、ここまで曲がってると、ちょっとうるさいな




以下、後期展

かなり展示替え有



●細川幽斎作 「鶴」

細川三斎の茶 その2 茶杓 (永青文庫)_b0044754_184873.jpg


これもやや小ぶり
すんなり
蟻腰で
一刀止か
古風


●細川三斎作 「けつりそこなひ」

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これは細身だ
素直な作ゆき
やや下がり節
蟻腰はやや直線的か
撓めがわずかに左にねじれている
櫂先は素直に丸い感じ
筒は真削り
左下にL字型の穴


●古田織部作 (無銘)

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織部らしい作
立派な蟻腰
やや深樋
撓めがわずかに右にねじれている
利休のとも似た素直な櫂先の丸みにして
露はやや平らか
二刀止め
筒は僅かに皮を残し
下部に穴あき


●小堀遠州作 (無銘)

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やや短めか
特に目立つでもない、珍しくおとなしい作
露は蓮華弁状、わずかに兜巾たつ


●千利休作 (無銘)

黒々としている
たっぷりとした蟻腰
なめらかな曲線
ゆったりとした枉げ
櫂先・露は細身の丸櫂先
おっとりもすらりとして
切り止めは二刀か
筒は真削り、はつり目たつ
書付は磨滅してほぼ読めない

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じつに端正で
じつに静かだ

美人だな

すばらしい!
best everかも



茶杓以外では・・・

高山右近の書状が、泣ける
出雲肩衝と利休尻ふくらを並べる、ってのはにくい
例の茶碗は何度見ても結構

(また改めて書き留めておこう)

by so-kuu | 2013-05-20 12:55 | 茶道具
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