松風をきく その5 京松風 (紫竹庵)

京銘菓のひとつに「(味噌)松風」がある。

“和風カステラ”とでもいうような感じだけれど。
玉子・バターなどは使っていない。
小麦粉・砂糖、麦芽飴・白味噌を混ぜた生地にゴマなどのトッピングをして焼き上げる。
その誕生は安土桃山時代だそうだ。

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京都ではいろいろなお店が作っているけれど。
その中でも、一部で「松風御三家」と呼ばれるものがあるらしい。

1.亀屋陸奥 「松風」 (「松風」の元祖、西本願寺前、西中筋通七条上る)
2.松屋藤兵衛 「紫野味噌松風」 (大徳寺近く、北大路)
3.松屋常盤 「味噌松風」 (御所南、堺町通)

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僕は「松風」が好きなので、見つければ求めて食べてみる

上記の1・2・3以外で、
その後、まずみつけたのが、

4.亀屋陸奥「西六条寺内松風」(詳細別ページ)


そして、先日の旅で出会ったのが、

5.紫竹庵 「京松風」

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このページでは、

5.紫竹庵 「京松風」

について書いてみる。

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京都旅の終わりに、JR京都駅地下で土産を物色している際に出会い、求めた。

家に帰って調べると、WEBサイトあり。
紫野大徳寺・孤篷庵近くにあり、
「紫竹庵 京都大徳寺納豆と和菓子のお店」をうたっている。


で、そのお味は・・・

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まず見た目。

羊羹のような棹物の形状。
開いてみると、プレカットなし。
なので、客の好みの大きさで頂けるのは嬉しい。

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表面は、味噌色の上に、ほんのり白いケシの実と、そして大徳寺納豆がボツボツボツと沢山浮かんでいるのが特徴的。
これまで他の松風では、ケシや胡麻がトッピングの主役だった。
大徳寺納豆が入っている場合は、浮いたり沈んだりして、中に散っていた。
対して、こちらのは、大徳寺納豆こそがトッピングの主役だ。
「大徳寺納豆を活かした上品で多彩な風味の和菓子をぜひ一度お試し下さい」とサイトでも言っている通りの松風。

側面は、ふっくら、ケーキのような見た目。
中にはほとんど大徳納豆はなし。

食べてみる。

まず味噌の香り。
そして、大徳寺納豆がガツンと来る。
全体は、しっとり、もっちり。

美味しい。

実は、あまり期待していなかったんだけれど。
なかなか、いける。

比較して評するならば…

1.亀屋陸奥 「松風」 とは全然違う。
パサパサでなく、しっとりだから。
まずここらで、好みが分かれよう。

2.松屋藤兵衛 「紫野味噌松風」 とは、大徳寺納豆を押している点で近い。
けれど、松屋の方が素朴・控えめで、味噌と大徳寺納豆の香りが渾然一体となった風味。
紫竹庵のは、なにより大徳寺納豆がガツンと来る感じ。

3.松屋常盤 「味噌松風」 とは、しっとり・もっちり、という点で似てもいる。
しかしながら、
松屋常盤のは、しっとり・もっちり・どっしり・こっくりだ。
どっしりは生地の密度と焼き方、こっくり感は素材からくるものだろう。
その素材と仕事の贅沢さが松屋常盤の身上だろう。
紫竹庵のは、しっとり・もっちり、だけれど、洋菓子のケーキのような感じ。
スポンジ状に焼きあがった生地も松屋常盤のと比べたら荒い感じ。
もちろん松和常盤のは大徳寺納豆も使っていない。
それでも、焼けた味噌の香りがプーンと香ばしく、むしろ大徳寺納豆など要らない。
松屋常盤のにはちょと敵わないかな。

4.亀屋陸奥「西六条寺内松風」と比べると、大徳寺納豆のあしらいに大きな違い有。
亀屋陸奥「西六条寺内松風」は、たまに大徳寺納豆と出会う、という楽しさであり、脇役の奥ゆかしさ。
紫竹庵「京松風」は、なにより大徳寺納豆。

総評すると、

大徳寺納豆屋らしい松風。

大徳寺納豆をフィーチャーする点では松屋藤兵衛に通じ、
しっとり・もっちり感では松屋常盤に通じるところあるが、
いずれとも違う独自のバランス。
「しっとり系大徳納豆派右翼の松風」と言えばいいかな。

やや洋菓子のケーキに近い食感。

松屋常盤に予約し忘れた京都旅で、帰りに京都駅で買う松風、というところかもしれないけれど。

これはこれで、ひとつ、存在意義のある、美味しい松風だ、と言えると思う。



最後に名称について。

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パッケージの表には「京松風」と書いてある。
裏の表示シールには「商品名:味噌松風」とある。

ここでは、「京松風」で統一した。
他にないネーミングで混同しにくいし。


(以上)


さて、ここで触れた「大徳寺納豆」について。
亀屋陸奥さんに言わせると、
うちでは「大徳寺納豆」でなく、「浜納豆」を使っています、
とか。

何が違うの?
呼び方だけ?

で、調べてみると。

***

「浜納豆」・・・

納豆の一。
煮た大豆に小麦粉をまぶして発酵させ、塩水に漬け込んだのち干した塩辛い食品。
糸は引かない。
遠江(とおとうみ)国の大福寺で作り始めたという。
浜名納豆。
大福寺納豆。

***

とか。
今も浜松で作られている。

でもまあ、製法はほとんど一緒、味もほとんど一緒と言っていいだろうな。

亀屋陸奥さんが「大徳寺納豆でなく浜納豆です」とこだわる理由は不明。

浄土真宗・西本願寺の御用達菓子司である亀屋陸奥さんは禅宗の“大徳寺”納豆を使うのを憚っているのかな、と思っている。
(それとも商標とか権利とかの関係か何かで「大徳寺納豆」を使えない、使いたくない事情があるのかな。)

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by so-kuu | 2012-11-06 12:54 | 菓子 | Comments(0)
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