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灰形は山でなく谷である

風炉の灰形をみて、
ある宗匠の曰く・・・


***

いいですね
キレイじゃないですか

個性が出るんですね
また、それでいいんでしょうね

灰形というのはね・・・
山を作るんじゃないんです
谷を作るんです

谷を作るから
向こうに山が出来たり、手前に月形が出来たりするんです
その形がどうの、というのは仕上げの処理の話であって
大切なのは、谷なんです

というのも、
谷は、そう、炭を置く火袋なんですよ

火袋が、あまり小さいと炭が置けないし、
かといって、大き過ぎても熱が逃げてしまう
火袋の大きさ・形がどうか
火袋にちゃんと炭が置けるか、
空気が回るか
炭がちゃんと燃えて、
湯が沸くか、
それが大事なんです

また、
五徳を据えるのが大事
釜が風炉の真ん中に据わるように、
五徳の位置を調整します
そして、
火袋に炭を組んで、
五徳に釜を乗せて、
炭が釜底に着くか着かないか、という高さが良いんです
まず、五徳の位置と高さを決めるのが、一番の手間かも知れませんね

釜の高さについては、
例えば、この釜の羽落と風炉の上面を合わせる、とも言いますし、
但し、釜の形によって多少上下させたりもします

この灰形は、わざと山を右の方に寄せているようですけれど、
そんなにしなくてもよいのでは?

谷の線が五徳のどことどこを通る、
とか、いろいろやかましく言ったりもしますし、
「七歪み」なんていう伝えもあるけれど、
あれ、あんまりいい教え方じゃないですね
真っ直ぐ作ろうとして、自然と少し曲がった、というくらいでいいんだと思うんです
まずは、素直に真っ直ぐ作る方がいいですね

何より、
炭がしっかり燃えるか?
湯を沸かせるか?
が大事なんですよ

灰形を作るだけでなく、
その灰形で、
実際に炭を燃やしてみる、
湯を沸かしてみることも大事ですね

***


全くその通り!


ここしばらく、繰り返し、
灰をつくり、灰形をつくっては、
実際に下火を入れ、炭を組み、湯を沸かして、
炭の着き具合・もち具合、湯の沸き具合・冷め具合を、観察していた

そうした実験・観察を通して、見つけ、感じ、考えてきたことを、
ズバリ、端的に言い当ててくださっているようで、
とても心を強くした



灰形は山でなく谷である

シンプルで深い言葉だ

すなわち
空気対流を促し、炭がよく燃え、湯がよく沸く、
そんな火袋をつくることこそ灰形の命


きっと、
茶の湯創成期の茶人の灰もそういうものだったはず
現在のようにカチッとはせず、ざんぐりとしていただろう
それが時代を追うにつれ、段々といわゆる灰形というカタになっていったんだろう

伝承が長い時を経て、単なる形に堕す、伝え・習いの本来意味したところが失われる、ということが、残念ながらきっとあるかと思う
長年伝わった形の表面だけをなぞるのではなく、本質を問い、真に意味するところを掴んでいきたい
失われた伝承の真意を再発見出来るような茶人になりたい

まあまあ

何より、

僕は、元来焚火が大好きで、炭を燃やすのも、湯を沸かし、松風の音を聴くのも、大好きなのだ

いつでも狙った時間にピタリと湯が沸かせる茶人になりたい

そして、美味しいお茶を、美しいひとときを、味わいたい

灰形も、灰作りも、そのための修練だ
by so-kuu | 2012-07-01 01:44 | 湯相・火相(炭・灰)
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